薄っぺらい映画評「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX 2D」
皆さんこんにちは。押井守監督のクセが強い作品が大好きなシオナイト(@sheonite)です。
好きな映画・個人的ベスト5にランクインする「機動警察パトレイバー2 the Movie」が4DX化され、再び劇場に戻ってきました。このチャンスを逃すわけにはいかないと、会社を休んで観に行ってきましたよ。
若干のネタバレありです。
あらすじ
1999年、PKOに参加した陸上自衛隊レイバー小隊が、東南アジア某国において全滅した――。それから数年後、横浜ベイブリッジがミサイルによって突如爆破される。報道ではそれが自衛隊機による空爆であったと告げられ、民衆は自衛隊に対する不信感を募らせてゆく――。
作品概要
「機動警察パトレイバー2 the Movie」は、1993年に劇場公開された日本のアニメ映画です。劇場版パトレイバーとしてはナンバリングのとおり2作目となります。
原作はヘッドギア。監督は押井守、脚本は伊藤和典、音楽は川井憲次というファンにはおなじみの組み合わせ。
前作の「1」は1989年公開。インターネットという言葉が認知されていなかった時代にもかかわらず、コンピュータウィルス(トロイの木馬)が題材という、恐るべき先見性をもった作品でした。ロボットアクションも秀逸で、アニメファンの中でも非常に評価の高い作品です。
本作は一転して、首都圏を舞台にテロやクーデターが起こるという、重厚なポリティカル・フィクションとなっております。渋いテーマになってしまった影響か、レイバー(ロボット)はおろか、主役級キャラ(遊馬や野明など)が活躍するシーンが少なく、原作のファンからはあまり評判は良くありません。
しかし、先見性の面では相変わらず目を見張るものがあります。オープニングからいきなりPKO(国連平和維持活動)という時事問題ですからね。ちなみにPKOへの自衛隊派遣は本作公開前年の1993年に開始。
更に毒ガスを使用したテロ、破壊活動防止法の適用など、地下鉄サリン事件を思い起こさせるような描写まであります。地下鉄サリン事件が発生したのは本作公開の2年後なんですよね。某団体は本作を参考にしたのではないかという噂が出たくらい(実際は違います)。驚愕です。
首都機能が東京に集中する問題、都市型テロの恐怖、周辺国の軍事力拡大、日本が享受する平和の実態など、劇場公開から約30年経った現代においても、非常に考えさせられるテーマを扱った本作。観るしかありません。
とまぁ、作品の解説はこのくらいにして、4DX化の話です。
本作の劇場公開は上に記載のとおり1993年ですが、4DX上映されたのは、1998年にパッケージメディア化(レーザーディスクとDVD)に合わせ、一部のセリフとBGMを再録音した「サウンドリニューアル版」がベースとなっております。
一部セリフの再収録や、シンセサイザーで演奏されていたBGMのオーケストラ化、5.1chサラウンド化が行われています。低音が響くBGMが本当にかっこいい。
これに4DXの効果がプラスされます。レイバーの動きに合わせてシートが動いたり、爆発に合わせて顔に熱風(ぬるい)が当たったり、雪のシーンで雪が降ったり…。
ただこれらの演出、本作との相性はあまり良くなかったです(後述)。
素晴らしかった点
作品自体ではなく、4DX化についてのみコメントします。
劇場の大画面で楽しめた
劇場公開が1993年ですからね。約30年前の作品を再び劇場で楽しめるなんて、本当に感謝しかありません。
おまけに1998年に制作されたサウンドリニューアル版は、DVDなどのパッケージメディア向けで、劇場公開向けではなかったわけですから、最新の映像・音響設備で堪能することができて、本当に幸せでした。
微妙だった点
4DXの演出が邪魔
冒頭の(PKOの)戦闘シーンで激しくシートが動いたり、水たまりに飛び込んだ時に水滴が飛んできたり、敵弾が命中したときに顔に風圧がきたりするのには「おおっ!」と思いました。
が、全体的に静かなシーンが多い本作では、4DXの演出は邪魔だなぁと思いました。はっきり言って相性が悪い。
水滴にしても雪にしても、発動する際の「プシュッ!プシュッ!」というコンプレッサー音が、見事に場面をしらけさせてくれます(笑)。
普通のスクリーンで落ち着いて観たかった、というのが正直な感想です。
大好きなセリフ集
本作はかっこいいセリフが多いんですよね。中には面白いやつも混ざってますが。時系列で紹介します。
後藤「惚れて惚れて、泣いて泣いて?」
荒川「いえ、その後です。ああ、雨に濡れながら。ここです!」
序盤にカラオケビデオを観るシーン。数少ないコミカルなシーンです。ここの一連のやりとり大好き。
荒川「あんたが正義の戦争を嫌うのはよく分かるよ。かつてそれを口にした連中にろくな奴はいなかったし、その口車に乗って酷い目にあった人間のリストで歴史の図書館は一杯だからな。」
中盤に後藤と荒川が話をするシーン。日本が享受する平和の実態を鋭く分析するシーンです。いろいろと考えさせられます。
荒川「舞台はミスキャストで一杯。誰もその役を望んじゃいないのにな。素敵な話じゃないか。これが俺達のシビリアンコントロールってやつさ。」
荒川のセリフが多いですね。ちなみに荒川の声を当てているのは役者の竹中直人さんです。シビリアンコントロールなんて、普段の会話で使うことないですよね。
シゲさん「特車2課整備班はこれより24時間の臨戦体制に突入する!長期戦に備えよ!今日からはトイレットペーパーも一人一回15センチまでだ!」
いや、1回15センチは無理(笑)。
松井「犯罪の陰に女と金。女は専門外なんで、金の流れを追いかけたのさ。」
松井刑事のオシャレなセリフ。この後、別のシーンで触れられる「女」の方の伏線にもなっています。
松井「器物破損。住居不法侵入。たぶん窃盗。もしかしたら暴行障害。警察官のやることじゃねえなあこりゃあ。」
ちゃんとこの後、この順番どおりに実行します。最後だけやられる方ですが(笑)。
後藤「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ。」
「踊る大捜査線 THE MOVIE」の『事件は会議室で起きてるんじゃない…』の元ネタになったと言われるシーン。カミソリ後藤(後藤隊長の異名)の本領発揮です。
荒川「国家に真の友人はいない。連中にとっては願ってもないチャンスだ。そうだろう?この国はもう一度、戦後からやり直すことになるのさ。」
日本の状況を見かねた米軍が介入しようとしている、という話。深い。
後藤「まともでない役人には2種類の人間しかいないんだ。悪党か、正義の味方だ。」
後藤隊長、格好良すぎる。
今回のオススメ度
「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX 2D」のオススメ度は★★★★☆(星四つ)です。
個人的には五つあげてもいいのですが、純粋なパトレイバー好きにはオススメできません。これはザ・押井守な、クセの強い作品です(笑)。
ただ、作品そのものはこのとおりなのですが、4DXの体験に+αの料金(1,000円)を払えるかというと微妙。
そんな感じです。気になった方は是非、DVDかブルーレイで鑑賞ください。
ではまた。
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